この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
「今日は残業だねぇ麻衣たん」
後ろから声がして振り返ると美沙がいた
「美沙」
「で?わんこくんは大丈夫?」
「うん朝からうるさくて」
「若いからねぇ
わんこくん溜まってるのかもよ?」
「へっ?」
「発情期なんじゃない?」
瑞希の場合はたいていが発情期のような気がする
「いや別に
瑞希は私の飼い犬だしそもそもペットとはしないでしょ」
「ふーん」
「もういいでしょ」
「ペットねぇ
わんこくんはどう思ってるんだろうね」
「わかんないよ話してくれないもん」
「それは聞かないからだよ麻衣が」
「かもね
でもいいの瑞希はいずれ出てく存在だし」
ぞんざいに言い捨てて作業を再開した
「死んだ人間を追いかけるより生きてる人間のほうがいいと思うなぁ私は」
「うるさい」
ばんと机を叩いて給湯室に逃げこんだ
すると声が聞こえてきた
「ねぇ知ってる?
課長と狩野さんつきあってるんだって?」
「だって狩野さんかわいいじゃん」
「だよねー」
美沙が?課長と?
私はトイレに立ち寄ってからデスクに戻った
午後の業務をこなしていたらいつの間にか定時になったが私は作業を続行した
今日は病院には行けないな
すると私のスマホが鳴った
「いい度胸してんじゃん
俺に会いたくないの?」
「瑞希」
「ん?」
「瑞希は女の子とその···したいの?」
「はあ?」
「だからしたいのって」
瑞希はゆっくりと話す
「したいよ、大好きなら尚更」
「そっか」
「なんだよ?」
「なんでもない、じゃあねおやすみ」
瑞希からの電話をきり私はきりのいいとこで仕事を終えた
バスと電車に揺られながら家に着く
瑞希のいない部屋
私はお風呂にゆっくり浸かりながら1日を終えた
朝になってまた瑞希からの電話
「おはよ」
「ストーカーじゃあるまいし」
「早く病院に来い」
私は今日は会社の有給を使い病院に向かうことにした
途中で瑞希の洋服を買い病院にバスで向かった
病室には瑞希がいた
「遅い」
「ごめん」
私は瑞希のベッドの上に着替えの入った紙袋を2つ置いた
「わかってんじゃん」
「瑞希」
「こないだから変だよなおまえ熱でもある?」
瑞希の顔を見るとドキドキするのになんでおでこなんて近づけてくるのよ
「ちょっと」
「熱はないみたいだな」
くっつけたおでこ目と目があう
ふと過ぎる美沙の言葉
「溜まってるのかもよ?」
瑞希が離れたと同時に頭を振った
「そんなわけない」
「はぁ?」
「なんでもない」
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