この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
「俺も1人には飽きてな」
「さっきからまわりくどいですよ
私、恋愛はしませんから」
「入江田すこしでいいんだ」
急に車を停めたかと思うと写真をつきだしてきた
よく見れば私が瑞希を拾った写真だ
また車ははしりだす
「なんで···」
「好きなんだよおまえのこと」
「意味わかりませんから」
ドアを開けようとしたけど鍵をかけられてしまう
そんなときスマホが鳴った
私が取るより早く菅さんがとってしまう
「なに?取り込み中あとにしてよ」
「あんた誰?」
この声
「瑞希」
私は気づいてほしくてありったけの声をあげた
「あんたはどこまで楽しんだんだ?」
「不躾な質問だな」
「どっちが?
せっかくひとが選ばせてやってんのに」
「瑞希ダメ
人を傷つけたらダメなんだよ」
私は咄嗟に電話越しに瑞希に言った
「彼は警察に通報すべきだと思わないか?」
私は言葉につまってしまった
でもひとつだけ守りたいって思ったんだ
だから勇気を振り絞って私はスマホを取り返して言う
「瑞希、瑞希」
まるで言葉を知らない子供のように何度も連呼していた
瑞希はちゃんと聞いてるのだろうか
一方的に途絶えた通話
それと同時に車が急ブレーキをかけた
赤信号でもないましてや信号などない一本道
変なのと思いながら前を見ると一台のバイクが道を塞いでいた
ヘルメットをはずすと瑞希だった
「瑞希」
「迎えに来た」
「···入江田」
「はい?」
「おまえヤバいぞ」
「えっ?」
菅さんの顔が凍りついていた
「おまえ新聞みないのか?
あいつはヤタガラスの橘瑞希」
ヤタガラス?なにそれ
「ヤタガラスって?」
「窃盗集団
みんなどっかにタトゥーがある
その1人で今もなお捕まってないのが橘ってわけだ」
「そんなわけない」
私は急いで車を降りた
瑞希のタトゥーは鴉の羽根
ウソ···そんなの
「なんだよ?」
「瑞希ちゃんと話して」
「とりあえず帰るぞ」
瑞希につかまりながらバイクでマンションまで送ってもらった
「瑞希」
「ヤタガラスね懐かしい」
「ちょっとどこ行くのよ病院は?」
「飽きた
おまえの顔みれないのがイヤだ」
強引に私の腕を引っ張ってエレベーターに乗り部屋に着くなり私の寝室にずかずかと踏み込む
「奪ってやるよ」
「ちょっと瑞希」
「知りたいんだろ俺のこと」
「瑞希痛いってば離してよ」
強引に手を振り払う
「ごめん」
えっ?意外に素直かも
もっと強引なのかと思ってた
< 7 / 38 >

この作品をシェア

pagetop