恋する歌舞伎
と、そこへやってきたのは磯部家で奉公していたお蔦の同僚・おなぎ。

彼女は事前にお酒を届けさせ、宗五郎の家に焼香をしにやってくる。

そしてお蔦家族の前で、おなぎから聞かされたのは
「お蔦さんは悪くありません。ひょんなことから不義の疑いをかけられ、殺されたのです!」
という衝撃の発言だった。

詳細を聞くと、お蔦の飼い猫がいなくなったため、探しているところへ磯部家の用人・岩上典蔵がやってきた。

典蔵はお蔦を手籠めにしようとしたが失敗。

しかも、そのときお蔦の悲鳴を聞き駆けつけ介抱した浦戸紋三郎に罪をなすりつけたという。

それを信じた短慮なお殿様は、お蔦が城内で他の男と不義密通を働いたとして、髻を持って引き回しにするなど散々なぶった挙げ句、手討ちにしたというのだ・・・。

あまりに非道な話に、一同悔し涙に暮れる。

怒りが抑えきれず、妹を想いやるせなくなる宗五郎は、とうとう禁酒を破ってしまう。

実は宗五郎は大層な酒好きで、酒乱の気がある。

そのため金比羅様に誓いを立てて酒を絶っていたのだった。

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