恋する歌舞伎
はじめは断固として、酒は飲まないと決めていた宗五郎だが、一旦飲みだすともう止まらない。

一杯、二杯とすすみ、湯呑では間に合わず、やがて妻・おはまの制止も聞かず、片口で飲み始め、終いにはそのまま樽に口をつけとうとう飲み干してしまった!

お酒の力も相まって、お殿様への憎しみが高まり、とうとう宗五郎は直談判をするべく、千鳥足で磯部の屋敷へと向かっていく。

これは一大事とおはまはその後を追う。

酒乱と化した宗五郎は、お屋敷の玄関先で
「殿に合わせろ!」
と暴れ出すが、それを制しにやってきたのは憎き岩上典蔵。

宗五郎は縛り上げられてしまう。

おはまは酒に酔ったことでの衝動だと許しを請うが、聞き入れられない。

遺恨ある相手とわかっているのかいないのか、宗五郎は典蔵を蹴り飛ばしたので、軌り捨てられそうになるが、あわやというところで助けたのは、家老・浦戸十左衛門。

お蔦との不義をなすりつけられた紋三郎の兄である。

話のわかりそうな十左衛門に、宗五郎は妹が濡れ衣を着せられたこと、兄として無念の胸中を吐露するが、そのうちに眠り込んでしまう。


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