恋する歌舞伎
美代吉(みよきち)は売れっ子の芸者だが、博打好きの船頭・三次(さんじ)を間夫にしている。

ヒモ同然の三次は今日も金の無心に来るが、美代吉は大事なお祭りが控えており、その支度金にも困っているので金を渡すことができないと断る。

それに対し三次は「最近、縮屋の新助といい仲になっているからだろ」と言いがかりをつけるので、新助と会っているのはお金を借りるためで相手にするはずもないと説明する。

縮屋新助とは、純朴で仕事に真面目な商人だが、田舎から出てきた地味な男のこと。

しかし新助は美代吉に惚れており、金まで貸している。

このころ新助は、仕事を終え国元へ帰るため得意先に挨拶に来ていた。

そこへ通りかかったのは、美代吉の乗った猪牙舟(ちょきぶね)。

その行き先が三次の所だと聞いて内心嫉妬をするが、美代吉の後ろ姿をうっとりとした目で見送るのだった。


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