恋する歌舞伎
それから数日後、美代吉は祭のために誂えた衣裳の代金が払えずに困っていた。

そこへ新助が訪ねてくるので、酒を勧めながら愛想よく接待し、新助を舞い上がらせる。

二人で盃を交わしているところへ三次がまたもや金を欲するので、やけになった美代吉は

「困っている状況を知っていながら金の無心に来るなんて薄情者だ」

と、新助のいる前で三次に愛想尽かしをする。

怒った三次が家を飛び出していったので、美代吉は

「今日百両を用意できなければ、衣裳を返さねばいけない、そんな恥をかく位なら死にたい」

と猫なで声で新助に訴え、

「いっそ新助さんの故郷で暮らしたい」

とまでいう。

真に受けた新助は

「金が用意できれば美代吉さんの顔も立ち、三次とも別れられるんですね」

と念を押し、更にこの家で一緒に暮らしたいという。

一瞬戸惑うものの、まさかこの男に金が用意できる訳が無いだろうと楽観視し、美代吉は大歓迎の素振りを見せる。

それを聞いて喜んだ新助は大急ぎで金の工面に出かけて行く。

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