恋する歌舞伎
そこへ進み出たのは長女・桂。彼女が差し出したのは、昨日父が打ち上げたばかりの面であった。

これを見た頼家は、あまりに素晴らしい出来栄えに感嘆の声を上げる。

しかし夜叉王いわく
「この面には死相が出ているのでとても献上できる代物ではない」
と言い、これまで打ってきた面も同じく、死相が出ていたため差し出せなかったと明かす。

しかし頼家はこの面が気に入り、更には桂のことも見初めたため、自分に仕えるよう命じる。

願ってもみなかった申し出に驚き、喜んで受け入れる桂。

早速、頼家は桂を伴い、修禅寺の御座所(高貴な人の居室)へ向かう。

一方、なんと拙い面を頼家様に献上してしまったのかと、後悔のあまり呆然とする夜叉王。

自分の作品を打ち壊しながら
「もう二度と面を打つことはない」
とまで宣言するのだった。


< 123 / 135 >

この作品をシェア

pagetop