恋する歌舞伎
相手の子供だけでも命がつながったと安堵するも束の間、それは互いの子を助けるための偽りの合図だったとわかる。

操を立てたいという願いにより雛鳥は母の手によって首を落とされ、久我之助は切腹を果たすのだった。

嘆き悲しむ親たちだが、せめて天国で結ばれるよう吉野川に雛鳥の首を流し、久我之助のもとに無言の嫁入りをさせる。

息も絶え絶えの中、雛鳥の首と対面し笑顔をみせる久我之助なのだった。



この『妹背山婦女庭訓』は、歴史の時間に習うであろう、飛鳥時代に起きた「大化の改新」を下敷きにしているが、雛鳥と久我之助の話をはじめ、もちろんフィクションである。

しかし時代の荒波によって引き裂かれた恋人たち、歴史の教科書には載らない若者たちの悲恋物語は、歌舞伎の世界で息づいているのだ。



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