恋する歌舞伎
外の柳に斧が入れられる度に、苦しみだすお柳。

彼女は痛みに耐えながら自身の秘密を夫に打ち明け、所持していた法王のドクロを渡す。

これを都に持参して出世して欲しいと託し、お柳は消えてしまうのだった。

一方柳の木はとうとう切り倒されてしまい、運び出されることに。

しかし不思議なことに木をのせた車は、平太郎の家の前まで来た途端、いくら引いてもぴくりとも動かなくなってしまう。

そこへやってきたのは緑丸を連れた平太郎。

思い当たることがあるので、我が子に音頭を取らせ、自分たちに綱を引かせてほしいと申し出る。

すると今まで岩のように動かなかった柳の木はするすると動き出す。

そしてこの働きや、お柳から預かった法王のドクロを差し出したことが手柄となり、没落していた平太郎の家は再興するのだった。

お柳はその後、二度と姿を現すことはない。だが都に運ばれた柳の木は三十三間堂の棟木となり、今も私たちを見守っているのだ。

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