恋する歌舞伎
証拠は揃っている上に、否定もできないピンチの長右衛門。

そこへ助け船を出したのは妻・お絹だった。

彼女は「長さまというのは夫の“長”右衛門ではなく、信濃屋の丁稚の“長”吉のことだ」というのだ。

もちろんおとせ親子は信じるはずがなく、それなら本人に事実かどうかを確かめると、長吉を呼び出す。

すると意外にも、長吉は「お半と結ばれ自分の女房となった」と自慢気に話す。

長右衛門も不思議に思うが、これはすべてお絹が仕組んだこと。

お半とのこともすべてを承知しているものの黙っており、これからも長右衛門と夫婦でいたいがために、事前に手を回していたのだった。

健気なお絹に心を打たれた長右衛門は、深く詫び、これまでのことは水に流そうと、固めの杯を交わすことにする。


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