人魚がいた夏-第1部-
柘榴の鬱<BY*陸>
眼を開けると波音から貰った水色の腕時計が、5時を指していた。
3時間、眠っちまったのか...。
ベッドの上でまだすやすや眠っている雫を見やると、俺は診療所の外にでた。
この診療所は海から少し高くなった所にある。
もちろん、海が丸見えだ。
波音が、通り過ぎる頃だと思う。
自転車は俺が使ってるし、波音は歩いてくるはずだ。
あいつ、家まで歩かせた事ねぇよな。
俺は急いで診療所に立てかけていたカマチャリを出した。
「あれ?
陸君?」