人魚がいた夏-第1部-
「あれ?陸?
あ!!!宮里先生!!!
お久しぶりです!!!」
突然、波音の声がした。
「あぁ、波音ちゃん。
久しぶりだね。
元気?」
「はい。
あ、陸!!
陸の自転車なかったら歩いて帰ってきたんだよ~」
ちょうど波音と逢えたことにほっとし、俺は急いで波音に謝る。
「わり。
今迎え行くトコだったんだけど...。」
「別にこなくても帰れるけど~」
「お前って素直じゃねぇな。」
そういうと波音はぷっと膨れた。
最近、波音が分からなくなっていた。
昔は、なんでも素直なやつだったと思う。
皆つらいんだよ...、か。
俺はだまって自転車を引くと、目で波音に乗れと合図をした。
後ろに乗った波音を確認して、俺は夕日の中を掻き分けた。