人魚がいた夏-第1部-
「雫とのことだよ~
私に言ってくれたってよかったのに!!!
両思いなんてうらやましい~
雫もすごぃ幸せそうだったよ!!!
私、邪魔しないようにするね~!!!
じゃ。それだけだから!!!
私お風呂入ってくる!!!」
そういって、私は一目散に部屋のドアを目指す。
・・・苦しかったな。
私は、陸の顔さえ見ることができなかった。
きっと、じわりと滲んだ涙を見られるのが怖かったから。
少しひやりとする階段を降りながら、後を振り向く。
陸が追ってくるなんて、そんなこと考えなければよかった...
キッチンの戸をあけて、顔を覗かせる。
「おばさん?
私今日雫の家にとまってくるね!!!」
洗い物を片付けていたおばさんはにこりと笑って
『気をつけてね』
といってくれた。