人魚がいた夏-第1部-

おばさん、嘘ついてごめんね。



罪悪感が残る胸を痛めながら、そっと玄関の戸を開ける。


少し寒くなった夜の風は、私を癒してくれるようだった。




私は、海が見たい。




夜の海が。


今、私に海が見せる表情は漆黒の嫉妬の色?


深いブルーの汚れた憎悪の色?






今、海がとてつもなく見たい。




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