人魚がいた夏-第1部-
私は恐れでもするように、そろそろと海に向かって足を踏み出した。
私、今、何を想っているんだろう。
そんなことさえわからなくなる。
でも、でも...
陸の顔がうかんでくるんだよ...。
お母さん達がいなくなってから、私を立ち直らせてくれた人。
いつだって、私のそばにいてくれた人。
私を、どんなときも楽しくさせてくれる人。
少し茶色の髪で、長めに伸びた前髪。
笑ったときの目の脇のしわ。
自転車漕ぎ出すときの右肩前のめる事。
...
頭の中の陸が、私に話しかける。
...笑いかける。