人魚がいた夏-第1部-
私は、すう、と想いっきり空気を吸い込む。
「陸――――――!!!!!
大好き――――――!!!!!」
波音の声が、海一面に広がった。
きっと、満月にも聞こえてるよね。
満月に向かって、私は微笑んで見せた。
胸に、あたたかいものがこみ上げてきて、涙が出そうになる。
「私は...泣かないって決めたんだから...」
懸命に涙をこらえる。
がさっ
その時、後から草を掻き分ける音が聞こえてきた。
さっきの近道だ―
あれは、私と陸しか知らないのに...
「だ、れ...?」