あなたはわるい人ですか?


その女子生徒は、いつもはおちゃらけたキャラだった。冗談ばかり言ってクラスを笑わせているような女の子。それがその日は別人のように真面目なトーンで話した。自分の家が父子家庭であること。これまで結構な苦労があったこと。それを、誇りにすら思っていること。



「誰にもわかるなんて言われたくない。こういう家に生まれたから、強くなれたって私はそう思っています」



涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして話す彼女に、クラスのどこかからすすり泣く声が聞こえる。でも私は、内心冷え切っている自分に気が付いていた。

そんな経験は望んで手に入るものじゃないのに。したくてできる経験じゃないのに。それの何が偉いんだろう。たまたま手に入れた不幸の何が誇らしいんだろう、と。なぜか悔しく思っている自分がいた。




それからずっと胸に引っかかっている。

私の世界は、不幸や苦労に劣るだろうか?





< 4 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop