ドクター
久しぶりの
中庭
翌日実加が目を開けると、昨夜置かれていた簡易ベッドは、なくなっていた。
斉藤先生と手を繋いで寝た夜は、夢だったのかな。
そう思っていると、カーテンが開いた。
「あ、起こしちゃった?」
いた。見つけた。
斉藤先生、いて良かった。
実加はホッと安堵の表情をした。
「どうした?」
「昨日のこと・・・・・・、夢かと思って。」
「ははは。
現実だよ。
明るくなってからベッドを移動させると、他の患者さんに不審に思われるから、早めに片付けることは青木先生と決めたんだ。
俺はそろそろ仕事に行くから。
っていうか、実加。
お前、ちゃんと飯食ってないんだって?」
「だって、味がしないんだもん。
それに動いてないから、お腹空かない。」
「わかった。
じゃあ午後、時間あったら久しぶりに外に行くぞ!
っても中庭だけどな。」
「え?外?」
「嫌か?」
「何ヶ月ぶりだろ・・・・・・。」
「そうだな。
楽しみにしとけよ。」
斉藤先生はそう言い残すと病室を後にした。
実加は久しぶりに外へ出ることに少し緊張していた。
車椅子に座っていればいいのだが。
外の空気に触れることや、知らない人に顔を見られることに、少し抵抗を感じていた。