ドクター
回診になると、青木先生と看護師のりさがやってきた。
二人は昨夜、斉藤先生が実加の病室に泊まっていることは知っていたので、てっきり実加は気分よくしているだろうと思い、病室を訪れた。
しかし、実加は窓を見ているだけで、青木先生が声をかけても返事はするものの、いまいちだった。
「実加ちゃん?どうしたの?」
一通りの診察が終わり、実加の顔を覗き込む。
実加は青木先生とりさの顔を交互に見た。
「・・・・・・今日、斉藤先生がお昼から中庭に連れてってくれるって。」
「そうなんだね。それでどうしてそんなに暗いの?」
「久しぶりの、外だから・・・・・・。」
「ん?」
青木先生が実加に聞き返す。
「少し、怖くて。」
「はは。そういうことね。
実加ちゃん、大丈夫。斉藤先生もついてるし、前と同じように外の空気をたくさん吸っておいで。
それに、等々力先生との秘密の場所のこと、思い出してみなよ。
楽しかったんでしょ?」
「はい。」
「じゃあ今日は特別!
肝臓にも優しい、暖かい飲み物。僕から差し入れするから、斉藤先生との散歩に持って行きな。」
そう言われると、実加の目が輝いた。
「わかりやすいねっ。
そのかわり、ちゃんと食事するんだよ?
散歩から帰ってきたら、今日の夜はお腹空くでしょ?」
「うーん、たぶん。」
というと、青木先生とりさは声をそろえて笑った。
二人は笑いながら顔を見合わせている。
「は・・・は。」
と言いながら、顔は真っ赤だ。
何かあったことは、未成年の実加でもよくわかる。
二人はぎこちないやりとりのあと、実加の病室を後にした。
実加は散歩が楽しみになった。