ドクター
実加は結婚して、斉藤先生の妻になったことで気を張り詰めていた。
本人にその気はないが、高校生の頃とは明らかに違っていた。
「実加、痩せたんじゃないか?」
ある晩、早く帰ってきた斉藤先生が、院長と実加の三人での食卓で、そう言葉をかけた。
「体重は計ってないから分からないけど・・・・・・。
ご飯はちゃんと食べてますっ!!!」
「そうじゃな。ご飯はわしと必ず食べてるからな。
今までより、よく体を動かしてるからじゃないか?」
「あぁ、そうか。
実加、無理しなくていいんだからな。」
「はい・・・・・・」
実加はよく斉藤先生に、無理しなくていいと言われる度に、自分が病弱であることが原因で、気を遣われているようで、自分の不甲斐なさにいつも落胆していた。
もっと丈夫な体であれば。
病院に行かなくてもいいし、斉藤先生にも迷惑をけないのに。
そう思ってしまう。
だからこそ、無理してでも与えられた主婦業を完璧にこなしたいと思ってしまっていた。