ドクター
「実加、どした?
食欲ないか?」
実加の担当は青木先生だが、今日まで北海道へ学会に行っているため、今日まで担当の斉藤先生が、実加のベッド沿いに置かれた椅子に座って尋ねる。
実加は小さく頷く。
「今は喘息がおさまっているから、今のうちにしっかり体力を付けておいて欲しいんだ。
それに、最近便が出ないだろ?
ちゃんと食べてないからだぞ。」
実加は再び、小さく頷く。
斉藤先生の後ろには、実加を見下ろすように工藤が立っている。
実加にはそれが恐ろしくて仕方ない。
「実加、何かあったのか?
話さなきゃわからないだろ?」
「.......何も、ない。」
実加は消えそうな声で答えた。
相当工藤に言われたことが心に来ているのだろう。
「分かった。
これ以上、無理には聞かないから、話したくなったら話せよ。」
実加は再び、俯いた。