ドクター
復帰した三池と青木先生と一緒に、斉藤先生は実加の病室に入った。
「実加、今朝の食事はどうだった?」
実加は少し表情が明るくなっていた。
「なんとか、食べれたよ。」
斉藤先生に昨日、胸の中のすべてをさらけ出したせいか、実加は斉藤先生に心を完全に開き、敬語ではなくなっていた。
「そうか、無理するなよ。それに、お腹が痛くなったら、必ずナースコールをするんだぞ。」
斉藤先生が言うが、実加は「うーん」と首を傾げてみせた。
「痛いんだったら、早く薬で治したほうがいいだろう?」
実加は考えてからこう話す。
「だって、お腹の痛み以上に注射と点滴がいやなんだもん。
痛いし、点滴は体が冷えるし。」
今までの抵抗は、それが原因だったようだ。
「実加ちゃん、早く治して、また院長先生に会いたいでしょ?」
そう看護師の三池りさがすかさず言う。
「はい!院長先生、一人じゃ可哀想。」
りさがうまく実加を誘導する。
「じゃあ、ちゃんとナースコールすること。
青木先生と三池さんの言うことを聞くこと。
脱走しないこと。
いいか?わかったか?」
そういう斉藤先生を見ると、せっかくりさに誘導されていた実加だが、すぐにまた頭を傾け「それはどうかな。」とつぶやいた。
「このっ!」
と斉藤先生が実加の髪をクシャクシャと手でかき混ぜた。
実加は「嫌だ~」なんていいながら、喜んでいた。