ドクター

中庭


それから一週間ほど経った。
実加は長引く退院に、飽き飽きしはじめていた。
胃の状態はすっかり良くなり、全部ではないが、食事は摂れるようになっていた。
救急車で運ばれてきた時の治療は全て終わり、なかなか退院させてもらえずにいた。
トイレ以外では極力外に出ないようにと青木先生に言われていた。




「退屈過ぎる・・・。」




先週の休みに、院長が遊びにきてくれた際に、高校の宿題までももって来てくれた。
宿題なんて、ずっとやってるものではないと、すぐに終わらせ、何もやることがなくなっていた。
中庭へ看護師のりさが車椅子で散歩に連れて行ってくれるが、それもたまに。
一人では行かないように、青木先生に言われていた。



斉藤先生がちょくちょく顔を出してくれるが、外来や自分の担当患者もいるため、実加をひいきすることはできない。




実加は退屈な昼食の後に、ベッドで仰向けになっていた。
そして、なぜこんなに入院してないといけないのか、青木先生からは現在の喘息と肝臓の機能の経過観察と言われているが、退院できる体だと、自分では思っているので、おとなしくしていけない毎日に納得ができなかった。





実加は窓際まで行き、中庭を眺める。
外では見舞いに来た人と車椅子に乗った患者、小児科の子供たちか、ボールで遊ぶ姿や散歩する姿が見受けられた。
のどかなのはこの目の前にある中庭だけ。
病室ではよどんだ空気の中、毎日憂鬱そうに暮らしている実加。





実加はひらめいた顔をして、ベッドの布団に毛布を詰め始めた。
たんすの中の私服を取り出すのかと思いきや、布団に入れる。





「よし、できた!」




病室の時計は午後1時30分。
ここから数時間はご飯もなければ、巡回もない。
3時間くらいは誰も来ない。
斉藤先生はこの3時間で顔を出すことは、最近はあまりない。
2時間以内に戻ってこれば、、、、



とでも考えているのか、指を折って計算している。




病室を出た実加は、ナースステーションを通らないように、ナースステーションとは逆方向に向かう。
そして階段へ。
一階まで階段を下りる。
一階の売店まで向かう。




売店に到着して、好きな牛乳と砂糖の入った缶コーヒーを買う。
それから、立ち止まり、知っている看護師や医師がいないか確認。




勢いよく病院の出入り口を出て行った。









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