ドクター

病室からいつも見ている中庭。
外を出ると、冬が近くなっているのか、冷たい風が吹き抜けていた。
そこで上着を持ってくることを忘れていることに実加は気づいた。



病室から見て、一番見えない位置。
いつか中庭へ行ったら、行きたいと思っていたところ。
ちょうど病室からまっすぐ垂直に行ったところに、大きな木があった。
その木の反対は、木の後ろで、少し芝生が坂になっていて、坂の下の方へ行けば、きっと病室から見えないだろうと考えていた。




実加は急いで目的の大きな木までいく。
そして坂を越えて、芝生をすべり下りた。



思ったより、寒くなかった。坂になっているから、風が通らないようだ。
立ち上がると日向に当たることができるが、病院側からよく見えてしまうので、足を伸ばして座った。
すると足元が日向に入って、暖かい。



脱出は成功したようだ。
実加は買ってきた缶コーヒーで寒さをしのいだ。



そして満面の笑みで缶コーヒーのプルトックを開けて、飲み始めた。
< 68 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop