ドクター
「ここのところ喘息の発作が奇跡的に出ていなかっただけで、今回のようなことは、今の君の体では頻繁に起きていてもおかしくないはずだ。
肝臓はこれ以上悪くなれば、一生病気と闘い続けることになるんだ。
自覚していないだけで、体はボロボロなんだよ。
これからは、僕の言うことをちゃんと守ってね。
次はないからね。」
と背を向けた実加に話しかけた青木先生は、椅子から立ち上がり部屋から出ていく。
それと同時にカーテンを開けて入って来たのは斉藤先生だった。
「実加!ちゃんと青木先生の話を聞いてるのか!?」
背を向けたままの実加に強い口調の斉藤先生。
実加は斉藤先生に返事をしないまま布団を被った。
さらに怒りが込み上げた斉藤先生。
「いい加減にしろ!自分の体なんだぞ!
もっと大切にしろよ!」
実加の布団を引き、布団に包まっていた実加が現れた。
実加は斉藤先生の方に体を向け、目から大粒の涙を流していた。
「こんな体、どうでもいいっ!
どうせ必要とされないで産まれて来たんだから!
どうなってもいいのっ!」
実加はものすごい剣幕で斉藤先生に言い放ち、半狂乱になりつつあった。
しかし実加の言葉が終わらないうちに、
バシッ
斉藤先生は実加の頬をビンタした。
実加は一瞬何があったか分からない顔をしている。
しかし、痛みが後から来たのか、叩かれた左頬に手で当て俯いた。
「ここには助かりたくても、助からない命がいくつもあるんだ。
そんなことを言うなよ。」
斉藤先生はビンタの後に、実加に語りかけるようにトーンを落として語った。
実加は左頬を抑えながら俯いている。
しばらく沈黙が流れた。