ドクター
意固地
翌日には元の一般病棟に移された。
といっても実加の場合、喘息患者の二人部屋であるが、ベッドは一つ空いているので実質一人なのだ。
青木先生からお灸を据えられ、斉藤先生から一喝され、実加はトイレ以外は絶対に出ないと意固地になっていた。
毎日ベッドにしがみつくように俯せで、医者や看護師が来ても最低限のことしか話さない。
看護師の三池りさにも。
「実加ちゃん、青木先生がね、気晴らしに車椅子で外を散歩していいって。これからどうかな?」
「・・・・・・・・・行かない。」
「ほら、もう何日も外の空気を吸ってないでしょ?気持ちが沈んでるんじゃない?」
「・・・・・・・・・行きたくない。」
「そ、そう。分かったわ。もし行きたくなったら言ってね。その時は、私が青木先生にお願いしてみるから。」
「・・・・・・・・・。」
とある日、斉藤先生が実加を尋ねると。
俯せのまま枕に顔を突っ伏して、動く様子がない。
「いつまでそうしてるんだ?」
「・・・・・・・・・。」
「よだれで枕がベトベトになるぞー。」
「・・・・・・・・・。」
軽く冗談を飛ばすが、実加は完全に無視。
とある日、等々力先生が病室を尋ねると。
「久しぶりにあそこへ行きませんかぁ~?
僕と実加ちゃんの秘密の場所。」
「・・・・・・・・・あそこは等々力先生の場所です。二度と行きません。」
撃沈・・・・・・・・・。
実加を元気付けようと皆が頑張ってみたが、ダメだった。