ドクター
実加の想い
物心がついたときから孤児院にいた。
小さな子から大きなお兄ちゃんお姉ちゃんがいる環境で育った。
自分のことは自分でやるのが当たり前。
孤児院での生活はそこで生活する子供達がするのが当たり前。
大人たちは何かあれば子供達を怒鳴り散らす。
時には手を挙げる。
それは普通の家庭でも同じだと思っていた。
学校に上がり、自分の育ちが特別だと知った。
友達は孤児院の友達しかできなかった。
それでいいと思っていた。
毎日、何の楽しみもなく、ただ朝目が覚めるから、体を起こして準備して学校へ行く。
気づくと18歳。
今年で孤児院は最後となる。
これかり先、どうしたらいいのか、普通の人はどうしているのか、私には手本になる大人がそばにいなかった。
中学の終わりに、風邪を引くと、やたらと咳が止まらなくなった。
その当時は、そういう風邪なんだと思っていた。
高校に入ると、運動することがなくなった。
ただ体育の時は、あの中学の時と同じように、風邪の時に出る咳が止まらなくなった。
ある時、保健の先生に、病院に行くように言われたけど、それは私が決めることではない。
そう言ったことは、孤児院のスタッフが決めること。
私からお願いはできない。
高校2年生に上がった頃、孤児院で咳が止まらず、呼吸が苦しくなった。
目を覚ますと、病院にいた。
それから孤児院にすぐ戻された。
しばらくして、学校から帰ると、孤児院の一番偉い人に言われた。
「明日、里親が迎えに来るから、荷物をまとめなさい。」
そして私は、里親の院長に出会った。