ドクター

高校3年生の春。
私はようやく里親が見つかった。
この年で里親が見つかる人は今まで見たことがない。
皆、孤児院に残っていて高校を卒業すると、知らない間にいなくなっている。
それから先のことは知らない。







「今日からよろしくね、実加ちゃん。」






60歳くらいのおじさんが、私を迎えきた。
頭は白髪。小肥りの体型。白いヒゲを生やしている。
このおじさんは孤児院から離れた町で個人病院を経営しているという。そこから私はこの人を院長と言うことに決めた。





その病院に向かう車の中、私は黙って院長の話を聞いていた。
里親が現れることは予測してなかったから、こういうときに、どしていいか分からない。
話は院長と一緒に住んでいる男の人についてだった。
その人は、私のお兄さんだという。
突然、現れた兄。
私に兄妹がいたことを知らなかった。
親はもはや生きているのかどうかも分からない。






兄ってなんだろう。






そんなことを考えていると、院長の住む病院に着いた。

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