クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
「…名前は、ない。年れいは5さい。」
「え、俺とおなじ…?」
「ちがう。あした、6さい。」
「誕生日が明日ってことか?なら、陽向の1つ年上だな。」
正直、俺には少女が何を言いたいのかさっぱりだったが、すーは少女の言葉を理解して俺たちに翻訳した。
「…あなたは、だれ?」
「ん?俺か??
俺は雪白 澄海。こいつらの兄貴分みてーなもんだ。好きに呼んでいいぞ」
少女に興味を持たれたのが嬉しかったのか、すーは少女の頭を笑いながら撫でた。
「…ねぇ、お家がないんだよね?」
そんな微笑ましそうな光景を少し離れたところから見ていると、隣にいたはずのひよが少女へと近づいていっていた。
(コクッ)
「じゃあ、帰るところもない?」
(……コクン)
「なら!私たちといっしょにくらそ!!」
「ぇ……?」
突然なひよの言葉に俺もすーも少女も驚いた。
何を言い出すかと思えば、いきなり一緒に暮らすなんて…
「うーん…じゃあまずは名前がなきゃだよね。」
真剣に悩み始めたところを見ると本気らしい。
…ひよは昔から本気になると意地でも意見を変えないから、俺とすーはすぐに諦めた。
「あっ!そうだ!!ひまりは?」
「えっ?」
「きーまりっ!!!!
今日からあなたの名前はひまりよ!」
「…ひまり??かんじは?」
「"向日葵(ヒマワリ)"ってかいて"ひまり"!!
私たちとそっくりでしょ?」
さっきまで戸惑っていた少女も、名前をつけられるのが嬉しいのか、初めの虚ろさがなくなってひよへと話しかけた。
「…向日葵??じゃあ"ひま"な!」
完璧に置いてけぼりにされた俺は、すーとひよの2人の間から顔を出し、ニコリと笑いかけた。
「ひま??」
「そっ!向日葵だとながいだろ??だからひま!
俺はひなってよんでな?」
「じゃあ私もひよって呼んでね!!
これからよろしく!」
「うんっ!よろしくねっ
ひなっひよっ!!」
この時、俺たちは初めて少女の、ひまの笑顔を見た。
…年相応の、名前にぴったりな明るい笑顔を。