クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
桃井陽向 side
ひまが俺の家に来てから1週間後、俺たちはひまを連れて家を出た。
…結局ひまのことは、本当の名前も、家族のことも、家のことも、何一つわからなかった。
ってゆーか、本人が思い出すのを拒否していたから無理には聞かなかった。
…それでも、別に不便にも感じなかったし、話してくれるようになればいいなー。くらいだった。
それに、あれからもすーは何度も家に来てくれて、ひまが細いことを気にしたのか、慣れない飯も作ってくれたりもした。
そして、ずっと家にいないで外にでも遊びに行ってこい!と休日の昼間に家を追い出された。
家の中はクーラーが効いてて全く感じなかったが、外はジリジリと日差しが暑い。
日陰の多い大きな公園を選び、俺は遊具に触ったが、暑い日差しに熱され、鉄の遊具は凄く熱かった。
そのせいで遊具で遊ぶ気にもならず、大きな木の木陰でただ休んでいた。
「ひーな!汗はちゃんとふかないと風邪引くぞ?」
顔に垂れる汗を手の甲で拭うと、後ろから俺への注意が聞こえた。
その声は、当時の俺にとってかなり聞き覚えがある人物の声だった。
「"しー"!!なんでここに!?」
ひよの茶髪より明るい、栗色の髪をした俺よりちょっと年上の少年。
「すーにひなたちがここにいるって聞いたからさ!来ちゃった。
こーも呼んだって言ってたから来るはずだよ」
生まれ持ったエメラルドグリーンの瞳。
「え!?ほんと!やったー!!」
…その少年は、水無月 時雨。
凪と神楽の実の兄。」