クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
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…今から11年前。
当時8歳だった俺は、ごく普通の家庭の子供だった。
家族は父親と母親だけで、3人家族の一人っ子。
父さんたちは普通の親にしては若く、母さんはたった15歳にして俺を産んだ。
父さんも当時18歳で結婚も出来ず、駆け落ち同然で家を飛び出したらしい。
だからか、俺は親戚類にも父さんたちの友人にも会ったことは一度もなかった。
駆け落ちも同然だったからか金も多くなく、両親共に仕事人間で3人揃うことは少なかった。
それでも育児放棄などはなく、俺は幸せな家庭で育った。
ひなたちの中で唯一学校へ通っていた俺は、当時から他人に合わせることが嫌いで教室でも1人でいるような子供だった。
…自分で言うのもなんだけど、当時から運動神経も良く、頭の回転も普通より速く、子供にしてはかなりの雑学が詰まっていた。
だから成績もスポーツも同年代に比べてずば抜けていた。
それに加え、見ての通り赤髪で目の色も琥珀色だからか、子供にしては近寄りがたかったのだろう。
周りも特に俺に近づくこともなく、ごく普通に過ごしていた。
……それなのに、それからの俺たち家族の人生を変えたのはあの火事の前の晩、7月10日の夜だった。
約1ヶ月振りに家族3人揃って食卓を囲んだ。
そこでいつものように静かに夕飯を食べていると、父さんがいきなり話題を切り出した。
「琥珀、明日明後日何か大事な用はあるか?」
箸を置いて俺の目を真剣な顔で見る父さんと母さん。
俺は嫌な予感がし、戸惑いがちに頷いた。