クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
「…だったら、わすれればいい。」
「……は、?」
きっと、何かの暗示だったんだと思う。
「ぜんぶ、わすれればいい。」
ひまに耳元でそう囁かれ、何故か眠気が襲ってきた。
「ぜんぶ。きょうのことも、いままでのことも、」
ひまの言葉が子守唄の様に、俺の瞼は閉じていく。
「僕のことも。」
ひまの姿は見えなくなり、瞼は完全に閉じた。
「さようなら、こーちゃん。」
…俺は、ひまのその言葉を最後に眠りに落ちた。
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そして、次に起きた時には…
「……誰だよ、あんた。」
…眠る前に望んだ通りに、俺は綺麗さっぱり全てのことを忘れていた。
今までの日常も、父さんと母さんのことも、ひよたちのことも、自分自身のことも、
…命の恩人であるひまのことも。全部。」
俺も、ひなと同じで逃げたから。
自分自身の"罪"から。
そのせいで、ひまは俺たちの"罪"まで背負ってしまった。
重い重い、人の"命"を。
輝「…それが、1回目の記憶喪失?」
琥珀「そうだ。
ひなは、目の前で親友で大切な仲間であるしーと、唯一の肉親の姉であるひよを亡くしたショックで。
…俺は、父さんと母さんを亡くした現実から逃げるための暗示で。
……結局、俺たちはそれだけのことで記憶を無くしたいほど心が弱かった。それだけだ」
そう。俺たちは心が、精神が弱いんだ。
人は誰しも死ぬ運命なのに。
それがただ、自分たちの目の前で、その時だったってだけなのに。
…俺たちはそんなことに耐えきれないほど、心が弱かったんだ…、。