クロ * Full picture of the plan * Ⅳ



「おいてめぇ天津千歳だろぉ?」



「うちのが前に世話になったなぁ。
ちょっとツラ貸せよ」



突然俺の目の前に現れた目がイってるこいつらはまだマシな方だ。



シャブ中(薬物中毒)の奴らは出会い頭に殴り掛かってくることも少なくねぇ。



いくら面倒でも声を掛けられるだけマシだ。



「一発殴らせろよぉ?」ブンッッ



この日声かけられたのは2人組の男。



どうやらうちのとシャブのことでトラブったらしい。



…とは言っても、俺はそんな報告受けちゃいねぇし、とんだとばっちりだ。



加えて、男共はシャブ中で話すら通じねぇ。



たった2人で俺を倒そうと、俺に向けて素早く腕を振りかざした。



が、シャブ中のたった2人の男に何の異常もない正常の俺が負けるわけねぇ。



俺は2人組を返り討ちにしてやろうと1人を蹴り上げようとした、その時。



パシュッ



すぐ近くで、サイレンサー付きの銃声が聴こえた。



「ぐわっ…ッ!」ドサッ



「!?ひっっ!?」ズザザァァ



1人、俺が蹴り上げようとした方の男が肩から血を流し、その場に崩れ落ちた。



その隣にいた男は、背を向けていた方から逃げるように、腰を抜かした状態で震えながら後ずさった。



…それはまるで、見えねぇ敵に怯えてるようで。



何処から銃声がしたのかわからない。



誰が撃ったのかもわからない。



誰かが自分を狙っているかもしれない。



シャブのせいもあるのだろうが、通常ならありえないくらい、奴らは過剰に恐怖を感じていたのだろう。



俺の存在など忘れて、縺れる足で走って街の方へ逃げていった。


< 279 / 386 >

この作品をシェア

pagetop