クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
「おいてめぇ天津千歳だろぉ?」
「うちのが前に世話になったなぁ。
ちょっとツラ貸せよ」
突然俺の目の前に現れた目がイってるこいつらはまだマシな方だ。
シャブ中(薬物中毒)の奴らは出会い頭に殴り掛かってくることも少なくねぇ。
いくら面倒でも声を掛けられるだけマシだ。
「一発殴らせろよぉ?」ブンッッ
この日声かけられたのは2人組の男。
どうやらうちのとシャブのことでトラブったらしい。
…とは言っても、俺はそんな報告受けちゃいねぇし、とんだとばっちりだ。
加えて、男共はシャブ中で話すら通じねぇ。
たった2人で俺を倒そうと、俺に向けて素早く腕を振りかざした。
が、シャブ中のたった2人の男に何の異常もない正常の俺が負けるわけねぇ。
俺は2人組を返り討ちにしてやろうと1人を蹴り上げようとした、その時。
パシュッ
すぐ近くで、サイレンサー付きの銃声が聴こえた。
「ぐわっ…ッ!」ドサッ
「!?ひっっ!?」ズザザァァ
1人、俺が蹴り上げようとした方の男が肩から血を流し、その場に崩れ落ちた。
その隣にいた男は、背を向けていた方から逃げるように、腰を抜かした状態で震えながら後ずさった。
…それはまるで、見えねぇ敵に怯えてるようで。
何処から銃声がしたのかわからない。
誰が撃ったのかもわからない。
誰かが自分を狙っているかもしれない。
シャブのせいもあるのだろうが、通常ならありえないくらい、奴らは過剰に恐怖を感じていたのだろう。
俺の存在など忘れて、縺れる足で走って街の方へ逃げていった。