クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
「……汚い、でしょ…?」
あまりにも衝撃的で目を見開いたまま固まっていると、か弱い今にも消えそうなひまの小さな声。
「…もう、治らない。汚くて、醜い……
‥‥自分でも、嫌になるくらい
僕は汚れてる。」
死んだ魚のような目をし、オッドアイの瞳の奥には今までにない真っ暗で深い深海のような闇が広がっていた。
「…っ、そんなこと、ッ……」
「あるんだよ。汚い僕は、人と関わりなんか持っちゃいけないんだ
元々、"存在しちゃいけない"存在なんだから」
聞いたことのない低いひまの声に引きずり込まれそうな震える声を必死で抑えて、否定しようとした。
けれど、ひまはただ淡々と泣きそうな顔で言葉を繋いでいく。
「…だから、さ。
もう、終わりにしたいんだ」
「…っえ、?」
終わりに、したい??
いつも主語のないひまの言葉を理解していた俺でも、その言葉の意味が全くわからなかった。
ぽかんと無表情に戻ったひまを見つめていると、ひまは無言で俺に近づいてきた。
「え、、ぇっ??」
訳がわからない俺はただただベッドに腰掛けたまま近づくひまを目で追っていた。
…ギュッ
座る俺の目の前まで来て一拍おき、抱きついてきた。
「ぇ、、っ?、ひ…まり??どうし」
「こーちゃん、っ。」
吃驚して話し掛けようとした俺の言葉を遮り、"こーちゃん"と呼ぶ声はさっきとは打って変わって涙声だった。
記憶を思い出していないその頃の俺は"こーちゃん"が誰なのかわからなかったが、ただ無意識に言葉を発していた。
「…ん。ゆっくりでいいから話してみ?」
「……っ、すこしでいいから…っきーてほしい。
ぼくの、"かこ"を。」
ポンポンっとひまの背中に手をまわして叩くと、涙声のままゆっくりと話し始めた。