クロ * Full picture of the plan * Ⅳ



「…ひま。泣いてる暇はない。俺の言うことをよく聞け?

今から俺は携帯も、武器も、何もかも此処に置いて逃げる。安心しろ、そんな遠くに逃げるわけじゃない
だが、このまま此処に居ても今までとは何も変わらない。折角ひまが話してくれたことを俺が忘れて終わりだ。


……だから…迷惑掛けてきたお前にこんなこと頼むのもあれだけど……

…ボスのことを少しでもいい、足留めしてくれ。」



"研究"の内容をバラしたなんてことはもうとっくにボスの耳に入ってるのだろう。



それなのに"罰"の恐怖を知っているひまにこんなことを頼むのは酷だ。



俺はひま自ら"罰"を受けさせようとしているのだから。



ひまが"研究"内容を俺にバラし、逃がした。



ひまが無傷で済むはずがない。



そんなのはわかってる。



…でも、ここでリスクを負ってでもこれからに繋げなければ、ひまは一生ボスの"人形"だ。



だから…だから、



「…わかっ、た。」



「っ…ひま‥‥…」



「…こーちゃんが謝る必要なんてないからね。全部、僕が悪いんだから」



「ひま!それはちが」



「こーちゃん。もうボスが近づいてきてる。早く行って?」



何もかも全て自分の責任だという言葉を否定しようとしても、冷静なひまに遮られる。



…この後の結末は、もう既にひまに視えていたのだろうか。



………だからお前は、最後に、、



「…味方になってくれてありがとう。




ーーさようなら、こーちゃん」



そんなことを言ったのか‥‥?



……真夜中に部屋を飛び出し、ある場所を目指し走り続けた。



追手の気配は感じない。



なるべく細く、暗い、抜け道の多い道を通っていく。



ある場所への近道として、火事の日以来一度も行っていない実家の裏道を通った。



実家の外見はあの時から何も変わらない、普通の一軒家。



思わず立ち止まりそうになる足を必死で進めた。



…もう覚悟はしていた。



………一生、記憶が戻らない覚悟を。


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