クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
「…今、俺はひまの言うボスの追手に追われてる。ひまが家で足留めしてくれてるが、いつまで持つかはわからない」
「え、っ?」
「ひまには琳に会うとは言ってないけど、多分あいつはわかってる。でも、ひまは琳を必死で護ってくれてると思う。
だから琳は、明日からも普通に接してくれ」
「こー、くんは‥‥?ねぇ、何をする気なのっ!?」
長年の勘で何かを感じ取ったのだろう。
俺に詰め寄るように聞いてくるが、俺は口を閉ざした。
「………悪ぃな、琳。俺はもう行くわ」
「こーくんっ!!」
行かせまい。と腕を掴む琳の手を無理矢理外し、琳が俺の名を呼ぶ声を背に再び路地裏を走った。
"何か"を感じ取った琳は俺を追いかけることはしないとわかっていた。
だから追手があの場所へと行かないように、俺は来た道とは違う道を走った。
-琳の元を離れ、数十分。
「…はあはあ、はぁ…っ…
つい、た…っ!」
俺は行きに通った一つの一軒家、"実家"を見上げた。
ガチャリ
正面の玄関の扉を開ける。
…鍵が開いていた。
誰も住んでいないから鍵が掛かっててもおかしくないのに、、
まるで俺を出迎えるかのように、家の中は当時のままだった。
約1年間帰ってきていないのに埃一つ見当たらない玄関を、靴を脱いであがる。
…当時と何一つ変わっていない廊下やリビングは、父さんたちが生きているとさえ錯覚させる。
「懐かしい、な‥‥」
たった1年なのに、追われていることも忘れて思い出に浸る。
ガチャッ
二階にある自分の部屋のドアを開ける。
…中はモノクロで統一され、普通の小学生には無縁の分厚い本が大量に並べてある。
あの頃と何一つ変わっていない。
…ひよたちと出会う前の俺は比較的インドア派で読書家だった。
保育園児の時ですら外では遊ばず、1人で私物の小説を読んでばかりいた。
ひよたちと出会わなければ、今も尚そういう生活を続けていたのかもしれない。