クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
…そんなことを考えながら子供用のベッドに腰掛けていると、
コツッコツッコツッ
階段を上がってくる足音が聴こえた。
‥‥あぁ、追手が追いついたか。
そう分かっても逃げる気にはならなかった。
追手もそれがわかっているのか、急ぐ様子もなくゆっくりと近づいてくる。
ガチャッ--ギィィー
軋む音を立てて開いた部屋のドアから1人の男が入ってきた。
…1人、か。
逃げるつもりは全く無いが、ここまで舐められるとイラつくな。
「貴様が朝比奈琥珀だな」
「そういうあんたは"ボス"だろ?」
雰囲気的になんとなくこの男がボスだということはわかっていた。
けれど、とてもじゃないが"ボス"というほど強くは見えなかった。
あのひまが逆らえないほどの奴だから、もっとそういうオーラがある奴かと思っていた。
でも実際は普通の奴には見えないにしても、人を操る奴にはとてもじゃないが見えない。
……だから少し、油断していた。
「…フッ
油断しすぎなんじゃないか?殺蝶。」
「っ!!」
逃げる前に言われた、
『どんなオーラでも油断だけはしないで。ボスは強いよ』
いつになく真剣だったひまの言葉も忘れて。
ーーブスッッ
「ッッ!!!!ぁ、っ」
一瞬で俺の目の前に来たボスは、油断していた俺の首の後ろ側に"何か"を挿した。
たった2、3秒だったのに、その"何か"は強力すぎた。
一気に身体の力が全て抜け、自然とベッドに倒れ込んだ。
「なっ、なん、、だ…?」
麻痺してくる口を無理矢理動かしてベッドに倒れ込んだまま目線をボスへ向けた。
「これはうちで研究している"記憶操作"の出来る特注品だ。身体が麻痺してきてるだろ?それは薬が効いてる証拠だ
お前は俺が合図すれば全て忘れる。
今、この状況のこともな。
記憶は一生戻ることないように作られている。何か言い残すことがあるなら聴いてやるぞ」