クロ * Full picture of the plan * Ⅳ



琥珀「‥‥でも俺は、結局助けられなかった。ひまを苦しめただけだった」



…今でも憶えている。



記憶を無くし、目覚めてすぐ目に入ったひまに、誰?と聞いた時の顔を。



不安、哀しみ、後悔、安堵、怒り。



様々な感情が混ざりあったような、表しきれない想い。



たった一瞬だったけれど、俺には忘れられなかった。



紫月「…あの、本当に父さんが"娘"だと言ったんですか……?」



…話し終わって数分が経つと、やっと全員が頭を働かせた。



そんな中一番に疑問をぶつけてきたのは紫月だった。



琥珀「…あぁ。確実にあいつはそう言った
本当かどうかは確かめようが無いがな。」



ひまの0~4歳までの育ての親である"パパ"と"ママ"のことは多少聞いている。



"虹羽百桃"のことも、あの"事故"のことも。



けれど、本当の親のことは一度も聞いたことがない。



ひま自身知らないと言っていたし、他人の家庭事情に首を突っ込むなと言われ続けていたから。



…だからただの憶測でしかないが、



琥珀「あいつは嘘をついてはいなかった。」



"最後"で"一生戻ることは無い"と言い切った相手に、わざわざ嘘の情報を教える必要はない。



どうせ、忘れてしまうのだから。



紫月「っ、!…じゃあ、俺と向日葵は……」



星藍「血の繋がった姉弟、ってことになるな」



紫月「っっ!!」



…そうだな。そうゆうことになるのか



ひまは"虹羽百桃"でも"クロ"でもない。



‥‥本名は、誰も知らない。



伊織「…なぁ、向日葵がボスの娘なら、もしかして俺みたいにボスに何か言われて青星に入ったのか??」



琳歌「それはないよ。」



伊織が回転の遅い頭を回し、出した答を琳は即答でキッパリ否定した。



再び辛い過去の話を聞き、少し涙目になっていた瞳は強い眼差しに変わっていた。


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