クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
ガタンッ シュッ カチャ
誰一人として動けなかった静かな空間に、素早く小さい、三つの音が響いた。
まずは、百桃が一瞬にして"彼"の右手にあった銃を落とさせた。
その落ちた音がした瞬間に、風を斬るように伸ばした百桃の手が地面の銃を奪った。
そして、慣れた手つきで銃口をある程度離れた"彼"の左手に真っ直ぐ向けた。
…本当に一瞬のことだった。
理解しがたいその出来事が、吉と出たか凶と出たかは今になってもわからない。
けど、多分百桃の行動は正しかった。
誰も手を出さないあの状況で反撃するには、相手の銃をまずどうにかしなければならなかったから。
どうやったのかは定かではないが、そのお陰で俺たちは助かったのは事実だ。
…百桃が銃を奪っても尚、固まって動けない俺たちとは違って、銃口を向けられている本人は可笑しそうに笑っている。
何故、この状況でも余裕があるのだろう。
そう感じたのはほんの数秒だった。
…だって、事実俺たちの方が不利だったのだから。
??「クククククッ
なぁ、百桃。お前は'それ'で俺が撃てるのか??
お前の"主人"である俺を、」
百桃「だまれっ!!」
……主人??こいつが?
と、考えたのをストップさせたのは初めて聞いた百桃の怒鳴り声だった。
百桃「あなたがそれでみんなをきずつけるのなら、ぼくはあなたをうてます」
??「ククッ それが出来るなら、な」バンッ
真剣な顔で"彼"を見つめるが、余裕の表情のまま百桃の横の先にある壁に向けて弾を撃った。
百桃を挑発しているのだろうか。
でも、百桃は銃を扱えるのか…?
海外に比べれば圧倒的に平和な日本では銃なんか子供に扱えるはずがない。
大人でさえもそうゆう世界に居なければ触れることのないモノだ。
子供では銃の反動に耐えきれず、逆に怪我をしてしまうこともある。
…だが、そんな心配もすぐに消えた。
ーーパンッ
百桃「貴方は"僕"には勝てない。絶対に」
さっきみたいな舌っ足らずな口調ではなく、はっきりと。
先程の"彼"と同じように、"彼"の横スレスレのところに向けて一発発泡した。
そんな百桃に驚く様子もなく、更に挑発的な笑みを浮かべた。
??「あぁ。お前"には"、な」
何か意味深な言い方をし、何事かと考える暇もなく、
ーーバァンッ シャッ
葵絆「ッッ、!」
"彼"は葵絆の肩目掛けて銃を撃った。