クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
警戒していたためか、咄嗟に反応した葵絆は少し横にズレたが、完全に避けることは出来なかった。
浅く、服が破れ、皮膚も少し切れたらしい。
思わず抑えた手に付いた血が俺からも見えた。
それが百桃の逆鱗に触れたのか、百桃から初めて殺意を感じた。
"彼"を殺す、と小さな背中しか見えない俺でも、全身からそういう想いが出ているのだと感じ取った。
一番近くにいる"彼"が、殺意を一番感じているはずなのに、余裕の表情を崩さない。
なにか相手には策があるのだろうか、と思考を巡らせようとした、その時。
ーーパァンッ
…百桃の手により、事態は急変した。
百桃が、初めに向けていた"彼"の左手にある拳銃に向けて、発泡した。
当然のように手の中の拳銃に当たった弾の衝撃で"彼"は手を離し、そのまま下に落ちた。
……しかし、それで終わりではなかった。
両手を挙げながらも笑い続ける相手を鋭く睨んだまま、今度は心臓に銃口を向ける。
二丁の銃を奪われ、丸腰の"彼"を撃つのか。
そう思ったが、違った。
百桃「…その銃をこっちに蹴って」
手を挙げさせたまま、銃を向けたまま、百桃は"彼"に指示した。
百桃の目を見つめ、ボールを蹴るかのように緩やかに、百桃の足元目掛けて拳銃が地面を滑ってくる。
それを足で止めた百桃は、銃口はそのままで拾おうとした。
…しかし、"彼"はそこで動いた。
カチッ バンバンッ
隠し持っていたもう一丁の銃のロックを素早く外し、百桃の手にある銃と蹴飛ばした銃を撃った。
百桃は、カタンッと衝撃で落とした手にあった銃を拾おうとするが、その前に"彼"は百桃を蹴り飛ばした。
「「「「「「「「「百桃っ!!」」」」」」」」」
咄嗟に駆け寄ろうと立ち上がるが、すぐに足に激痛がはしり、しゃがみこんだ。
それは初めに攻撃を受けた雷と飛鳥も同じらしく、結局動けたのは葵絆と楓たちだけだった。
だが、それを許すほど相手は甘くない。
??「全部、お前のせいでこうなったんだ。
そうだろ?百桃」
今度こそ殺そうと、百桃の頭に向けて弾を発泡した。
さっき蹴り上げられた衝撃で百桃は動けない。
つまり、弾を避けることは出来るはずが無い。
たった一瞬でそれを考え、思わず目を固く瞑った。
ーーバーァンッ
今までにないくらいの銃声が倉庫全体に響き渡った気がした。
血まみれの百桃を見たくなくて、でも気になって。
恐る恐る瞼を上げた。