クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
そこに広がっていた光景は、今でも忘れられない。
下「葵絆っっ!!!!」
小さく丸まる百桃を包み込むようにして"彼"に背を向けている葵絆が、
背から止まらない血を流し、ぐったりとしている。
……頭が真っ白になった。
何も考えられなくて、
でも、ただ一つだけスーッと理解した。
葵絆が危ない状態だということが。
百桃「きーちゃんッ…!!!!
きーちゃん!やだっ!!おきてよっっ!!」
葵絆の腕の中から出て、真っ赤な液体が溢れる傷口に必死で小さな手を押し当てる百桃。
呆然と見ていたその光景と百桃の悲痛な声で、やっと我に返った。
京「葵絆っ!!!!」
何も考えず、足が痛いことなんか忘れて葵絆に駆け寄った。
雷「百桃!!どうゆうことだよッ!?
誰なんだよあいつは!」
飛鳥「そんなの後でいいだろ!!
いいから止血しろよ…っ!!」
雷も俺と同じく目を瞑っていたのだろう。
混乱する頭でただ百桃を問い詰める雷。
それとは対称的に、素早く携帯を取り出し、救急車を呼んだ飛鳥がハンカチを持って葵絆に近づいた。
葵絆の血で真っ赤に染まった百桃の手を掴み、その代わりにハンカチを傷口に当てる。
そのまま百桃の手をどかし、自分の手で圧迫止血をし始めた飛鳥。
…今まで怪我をして血を流していた人なんて何人も見てきた。
当然、実家が組だから銃で怪我をした人も。
だから処置方法だって知っていた、はずなのに。
………知り合いが、仲間が撃たれただけで、こんなにも頭が真っ白になるのか。
今まで教えられてきた処置方法も接し方も、全てが頭から抜けていた。
…それくらい、頭の中は混乱していた。
だから、その後どうやって救急隊員に説明したのかも、俺が葵絆に何をしたのかも、はっきりとは覚えていない。
……ただ、救急車に乗ったのは俺だけで、その途中で葵絆の心臓が止まったということだけは覚えている。
必死で、意識不明で心肺停止状態の葵絆の名を呼び、気がついたら…
激しく人が出入りする手術室の前で、突っ立っていた。
ーーバタバタバタ
複数の足音が聞こえても尚、俺はその場から動くことが出来なかった。
飛鳥「っ京!」
雷「葵絆はッ!?」
だけど、飛鳥たちの声が聴こえた瞬間、
ガクッ
志「京!?」
極度の緊張状態にあった全身の力が全て一気に抜け、膝が折れてその場にへたりこんだ。