クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
…こんなところ、私は知らない。
本来、勝手には立ち入るなと言われていた部屋なのに。
それは、お兄ちゃんも来蘭も…百桃も同じだったはずなのに。
……ねぇ、どうして?
どうしてそこに、あの日からずっといなかった百桃がいるの…?
百桃「……っ、…ごめ…さっ……!」
都兎「ぜんぶ!ぜんぶっ!!お前のせいだ!!
母さんと父さんと来蘭を返せっ…!!」
床に散らばるおもちゃの破片や硝子の欠片。
ボロボロの服で小さくなって謝る百桃。
手当り次第物を投げたり床に叩きつけたりしているお兄ちゃん。
希輝「……や…っ……ぃやっ……ぁ………」
硝子の欠片などを手で掴んだのだろう。
お兄ちゃんの手のひら、腕や顔にも赤い血がついていた。
ボロボロの百桃は、服から覗く足に、腕に、顔に、青紫色の痣も、真っ赤な血も、ついていた。
あの日の出来事がフラッシュバックし、私を襲った。
流れ出ていた真っ赤な血。
鳴り響いた衝突音。
希輝「…ぉ……にぃちゃ…っ………」
これ以上誰かがいなくなるのは耐えられない。
プツッと足の裏が破片で切れたのを頭のどこかで感じながらも私は足を止めない。
隠し部屋の中央部で暴れるお兄ちゃんの腕に力一杯しがみついた。
そこでやっとお兄ちゃんは私の存在に気づいた。
……だが。
ブンッッ ガンッ
希輝「ッッ!!」
私の体は思い切り振り払われ、吹き飛んだ。
白地に水玉模様が描かれている壁に頭をぶつけ、そのまま気絶した。
…その後、二人の間に何があったかは知らない。
起きたら私は自分のベッドで寝ていて、足元にはもたれ掛かるようにお兄ちゃんが膝を抱えていた。
希輝「…おにいちゃん」
じっと何かに耐えるように膝に顔を埋めるお兄ちゃんに体を起こして声を掛けた。
その声に反応してすぐに顔を上げたが、その顔は傷だらけだった。
思わず手を伸ばし、まだかさぶたにもなっていない頬の傷に優しく触れる。
撫でるように手を這わせると、お兄ちゃんは私の手を掴んで目を合わせた。
都兎「……希輝。ごめん」
希輝「……おに、ちゃ?」
突然謝られ、なんのことかさっぱりわからない。
都兎「投げ飛ばしてごめん………痛いとこないか、?」
ぶつけた後頭部を撫でながら悲痛な表情で謝罪される。
希輝「だいじょーぶ、だよ??」
事実もう痛みはないし、混乱しているわけでもなかった。