クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
…殺される。
本気でそう思った。
それからの行動は、全部無意識だった。
ナイフを持った手をギュッと強く握り、思い切り振り上げた。
それは、当然のように目の前にいたお兄ちゃんに当たる。
………はずだった。
希輝「…ぅ、そ………、な、んで…っ…………!、ぁ……ぁぁあああ、ぁ……っ……、……」
さっきまで殺されかけていたのに、なんで、どうして、、
どうして、お兄ちゃんを庇ったの。百桃。
私が百桃を"殺した"。
百桃に、トドメをさした。
私が"殺した"百桃は自身の血の海に倒れ、固く目を閉じている。
私がお兄ちゃんに切りかからなければ、
私がナイフなんか遠くに投げておけば、
お兄ちゃんに抵抗しなければ、
百桃は"死ななかった"のに。
希輝「ぁあぁぁぁ……、ああああぁ、っぁぁああっ………」
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それからのことは、鮮明に覚えている筈なのに何も思い出せない。
まるで、ずっと続いていた道が突然途切れたかのように真っ暗で。
私の記憶は、百桃が"死んだ"その時から更に飛んで数日後の"日常"に当たり前のように続いている。
それに気づいた今、何故今まで気づかなかったのか不自然な程に。
今までは何も思わなかった。
だって、私にとってその記憶は"忘れていたい"ものだったから。
お兄ちゃんが狂って、百桃が死んで、私が殺した。
そんな記憶、封印していたかった。
ずっと、逃げていたかった。
……けど、そんなことを言っていられない事態になったから」
琥珀「…どういう意味だ」
あぁ…やっぱり、琥珀には全てお見通しなのね。
'そんなことを言っていられない事態'が百桃のことじゃないのにしっかり気づいてる。
……もう何も、隠せない。
希輝「…一週間以上前から、お兄ちゃんが行方不明なのよ。」
「「「「「「「「「「は、!?」」」」」」」」」」
陽向「どうゆうことだよ!?」
皆驚き、陽向は怒りを顕にする。
…そんなの、私にわかるはずがない。
私はずっと、逃げているのだから。
希輝「…いえ、違うわね。
これは、"行方不明"なんかじゃないわ
お兄ちゃんは、私、そして"虹羽都兎"を知る者の前から"完全に"消えたのよ。」