クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
木村直樹 side
直樹「"あいつら"の主人格、"虹羽百桃"との初対面は、百桃が2歳の頃だった。
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その頃は児童精神科っていう中学生以下専門の精神科にいたんだが、流石に2歳の子供は初めてだった。
そして、その子供は異例中の異例患者だった。
本来、総合病院に来る時は他の病院から紹介状を持ってくる。
しかし、その患者は直接この病院に来たんだ。
コンコンッ
直樹「どうぞ」
やってきたのは、若い男女に連れられた幼い子供。
姫星「よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる夫婦につられて同じ仕草をする子供、虹羽百桃。
直樹「えー、虹羽さん。どうぞ、おかけください」
幼い子供に不釣り合いな肘掛のついた椅子と、その横に看護師が置いた二つの丸椅子へ親子促す。
そして、子供と目を合わせる。
直樹「私は木村直樹です。
お名前を教えてください。」
顔を俯かせた際に、今にも消えてしまいそうな金糸がサラサラとおちる。
百桃「…こうは、もも、です」
どこか、儚さを思い浮かばせる子供だった。
直樹「百桃ちゃん。今日はどうしたのかな?」
百桃「………。」
この科にくる子供は自身で何も話せない子供も多い。
初対面の時なら尚更だ。
だから、今度は保護者へ問う。
直樹「今日はどうされましたか?」
智軌「…実は、百桃が」
百桃「オレがこの人らの前で話したんだ」
「「!!」」
'オレ'?
突然ハキハキと喋り出した子供に目を見張る。
…なんだ、?何かがおかしい。
子供から滲み出ていた儚さが、脆さが、一瞬にして消えた。
姫星「…百桃?」
不安そうに母親が伺いみるが、子供は真っ直ぐに俺を見つめた。
百桃?「オレは"百桃"じゃない。
なあ、あんたならわかるだろう?」
滅多に見るものじゃないが、幾人か知っている。
この症状は、恐らく。
直樹「…嗚呼。君は"誰"だ?」
百桃?「オレは…アカだ。百桃が名付けた。」
ここでもう確信した。
"虹羽百桃"とは別の人格、彼女は解離性同一性障害だと。
直樹「アカ…か。君は男だな。何故今出てきたんだ?」
当然に答えると思ったが言い留まり、カクンッと首がおちた。
姫星「百桃!?」
そしてまた、子供の雰囲気が戻る。