クロ * Full picture of the plan * Ⅳ
そんな少女を世間が放っておく筈もなく、誘拐された回数はただ知れず。
それを知っているからこそ、少年は少女に怒った。
『……あれ?ひま、これ怪我か??』
黙ったままの少女の足元へ視線を落とした少年が、今まで顰めていた顔をスッと戻し、しゃがみ込んだ。
真っ白いワンピースの裾ギリギリに見えた"痕"に不審を抱いた。
座っている少女の足に、持っていた携帯のライトを当てる。
『っ!!ひまッ、これどうしたんだよ!?』
その"痕"を見た少年が、思い切り顔を上げ、目を見開きながら少女へと問いかける。
『………怪我した』
一瞬だけ、少年と目を合わせたが、すぐに逸らし、ポツリと呟いた。
『何処で!?何してだよ!!
お前が不注意で怪我したとでも!?
そんなん信じる訳がないだろ!!』
…少女は、良くも悪くも"完璧"だった。
頭脳も、身体能力も、そして行動も。
転ぶ、躓く、ぶつける、はしゃぐ。
普通の子供が、極普通に、日常的に起こる動作が、少女にはない。
そんな少女が怪我をした。
それは、少女じゃなく、誰かに、意図的にされたものだと少年はわかった。