クロ * Full picture of the plan * Ⅳ



俺は特に何もすることがなく、スマホを弄っているフリをしながらこいつらを観察している。



…スパイをしていた俺はこいつらにいつバレてもおかしくない状況な訳で、バレていないか毎日のように必ず観察をしていた。



それが毎日の習慣だったのに、未だに解放されたことには違和感しかなく、信じきれていない。



でも実際に向日葵から言われて"ボス"に何も報告しなくなっても、何も言われていない。



つまり、本当に俺はスパイではなくなった。



…だけど、俺はこのままで本当にいいのだろうか。



確かに、このまま引退するまでバレなければいいと心の底から思ってる。



でも、俺がこいつらや先代たちを騙していたのは事実で、それを隠し続けて下っ端に尊敬されるのは違うと思う。



……俺はこいつらを騙し、隠し続けながら、ここにいてもいいのか…、?



"ボス"に解放されて荷が軽くなった筈なのに、逆に重くなった気さえする。



それはきっと、こいつらに罪悪感があるからだろう。



それを分かっていても言うことが出来ない俺は、本当に最低だと自分でも思う。



こいつらに軽蔑されたくない。



居場所をなくしたくない。



そんなのは綺麗事で、バレてそんなことになったって、文句は言えない。



だってそれは全部自業自得なんだから。



俺は逃げてるだけ。



それでも……嫌われたくない。



…スパイを始めた時なんかそんなこと思いやしなかったのに。



本当の仲間になりたい。



いつ、何を言われても、追い出されても、当たり前のことを俺はやったんだ。



…最近になって、やっとそれに気がついた。



………どうしたらいいだろう。



バラすなら今日の報告会だ。



先代たちが集まっていて、同盟たちも集まってる今日以上にチャンスはない。



……わかってるけど。それでも勇気が出ないのは、俺自身が弱いから。



…………本当に最低な奴だよ。俺は。


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