最強モテ子と落ちない彼
ピピピッ。
静かな保健室に電子音が響く。


「かして」

私はベッドに横になったまま、体温計を渡した。

頭がぼーっとする。 だるいな。

高村はベッド横の椅子に腰掛けて、体温計を確認する。

「37.8℃か。 救急で病院行く程じゃないと思うから、今日はここで寝て明日の朝帰りなよ」

「・・・うん」

「じゃ、ゆっくりできないと思うから僕はもう行こうかな」

「えっ!? 保健室に一人置いてく気?」

ぼんやりした頭で、懸命に抗議する。

「天野は幽霊なんて怖がるタイプじゃないし、一人で平気でしょ」

「・・・」

幽霊はちっとも怖くないけど。

高村がクスっと笑う。

「冗談だよ。急に具合が悪くなったら危ないし、保健の先生呼んでくるよ」

保健の先生なんていらない。

「・・・ 高村がいてよ」

立ち上がろうとした高村のジャージの裾を両手でぎゅっと掴んだ。

高村はほんの一瞬だけ、驚いたような顔を見せたけど、すぐにいつもの涼しい表情に戻る。


「う~ん、それはダメ」

「なんで?小宮さんに誤解されるから??

ずるいよ、小宮さん。
私の方が付き合い長いのに。

私の方がずっと前から高村のこ
と・・」

高村を掴んでいる両手に一層力をこめる。


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