大切な君とI LOVE YOU
発覚と突然の告白
オレと魔裟斗が入れ替わってから数日。
怪我も治り、学校へ行く日がやってきた。
オレも不安だけど、魔裟斗はもっと不安な様子だった。
三人でこれからのことについて、話し合いをした時、佑宇真にはいっぱい励ましてもらった。
だから、本当に自分の身体に戻れるか不安だけど、今、オレは『魔裟斗』にならなくちゃならない。
「寧々ちゃん、やっぱり、僕、自信ないよ……。寧々ちゃんになれない……。」
魔裟斗はあの日から弱音を吐きまくりだ。
(男のくせに本当に……。)
「今さら、ぐちゃぐちゃ言っても始まらないだろう?なっちまったものは。なるようになるんだよ。大丈夫だ。オレだって、佑宇真だって、ついてる!」
魔裟斗はまだ不安そうな顔をしていたが、
「…そうだよね。寧々ちゃんや佑宇真くんがいてくれるんだもんね。大丈夫だよね…。」
と、そう言った。
「おはよう!」
オレは思いっきり元気いっぱいにあいさつした。
もちろん、オレは今、『魔裟斗』の姿だ。
一瞬、クラスメイトたちが驚いた顔をした。
(ヤバい、モロ素の自分だった。しかし、一体、魔裟斗のヤツ、いつもどんなあいさつしてんだ?)
そんなことを考えてた時、
「マサくん、どうしたの?マサくんらしくない、あいさつの仕方。何かあったの?」
魔裟斗と一番に仲の良い、香里奈という女の子だ。
「…おはよう、香里奈…ちゃん。」
「う~ん。マサくん、やっぱり変。本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫、大丈夫!」
「それなら、いいんだけど。何かあったら、私に言ってね。」
「うん。香里奈…ちゃん、ありがとう。」
(ちゃん付けは、やっぱり慣れない。それよりも魔裟斗のヤツ、上手くやってるかな?)
僕は教室のドアの前にいまだに立っていた。中になかなか入れずにいるのだ。
すると、
「おい、優木寧々、お前、そんなとこで何やってるんだ?邪魔だ、どけ。」
速水くんだった。
「は…速水くん!ごめんなさい。」
「速水くん!?優木寧々、お前、どこかに頭打ったんじゃないのか?もしくは、何か変な物でも食べたか?」
「えっ!?」
(しまった~。僕は今、寧々ちゃんなんだ。寧々ちゃんなら、こういう時、どんな対応するんだろう?分からない……。とりあえず、え~い。)
「…は…速水、…お…オレがどこにいようと勝手だろ?」
思いっきり、どもってしまった。
速水くんは一瞬、変な顔をしたように見えた。
だが、
「まあ、お前がどこにいようと勝手だけど、俺の邪魔だけはするなよ。」
それだけ言い捨てると、またどこかへ行ってしまった。
(速水くん、授業、受けない気なのかな?)
だが、もうすぐ朝のホームルームが始まってしまう。
(僕も教室に入らないとなんだけど。)
なかなか勇気が出ない。
「あ~、ギリギリセーフ!あれ!?寧々じゃん。久しぶり。こんなとこで何してるの?」
寧々ちゃんの友達の紗耶香ちゃんっていう子だった。
確か、寧々ちゃんは『サヤちん』 って呼んでたような気がする。
「…サヤちん、おはよう。」
「寧々、早く教室に入りなよ。私も入ろうっと。」
「うん。」
僕は無事に紗耶香ちゃんのおかげで教室に入ることができたのだった。
オレと魔裟斗もお互いの生活に慣れ始めてきた。
変わったことといえば、速水が『魔裟斗』に一切、近寄ってこなくなったこと。
まあ、オレは近寄ってこられたら困るけどね。
だが、そんな時に重大な出来事は起こるのだった。
僕はなぜか速水くんに呼び出されていた。
(速水くん、一体、何の呼び出しだろう?何かドキドキする。とんでもない事を言い出すんじゃ……。)
目の前に立っている速水くんの顔をなぜか見られずに下を向いて、何を言い出すか、僕は待っていた。
「あのさ、俺、お前のことが好きなんだ。」
突然、速水くんがそんなことを言い出したので、ビックリして、僕は彼の顔を凝視した。
(ええっ!?速水くんって、寧々ちゃんのことが好きだったの?でも、でも、寧々ちゃんは佑宇真くんのことがずっと好きで……。速水くんだって知ってたのに……。)
「あっ、先に断っておくけどさ、俺が好きなのは優木寧々じゃないから。」
「へっ!?それって、どういう……?」
僕はワケが分からず、必死で頭で考えた。
でも、分からない。
「分からないのか?鈍感な奴。」
「鈍感って……。速水くん、意味分かんないよ。」
速水くんは恥ずかしげもなく、ハッキリと言った。
「俺は優木魔裟斗が好きだって言ってんの。」
それを聞いた瞬間、驚いたのと同時に、頭が真っ白になった。
「…は…速水くん、いつから僕が寧々ちゃんじゃないって、気づいてたの?」
「まあ、怪我して、初めて登校した時に会っただろ?その時からかな。」
(ええっ!?そういえば、一瞬、変な顔してたように見えたのは錯覚じゃなくて?でも……。)
「あのね、速水くん、今は『寧々ちゃん』だけど、僕、『男』だよ?」
「そんなの初めから分かってるんだよ。」
「でも……。」
「しょうがねぇだろ?たまたま好きになった奴が男だったんだから…。」
淡々とそう話すから、僕はもう唖然とするしかない。
でも、速水くんに『僕たちの秘密』がバレちゃったってことは……。
「速水くん、お願い!この事は誰にも言わないで!」
すると、速水くんは
「そんなの言わなきゃ、分かんないだろ?」
「速水くん!!」
「分かってるよ。誰にも言わねーよ。」
速水くんはそう言ってくれた。
「それよりも、俺にバレた事、優木寧々や冴樹には言うなよ。どうせ冴樹の奴は知ってるんだろ?」
「うん。佑宇真くんは知ってるけど、でも、どうして二人に言っちゃいけないの?」
と、僕は素朴な疑問を速水くんにぶつけてみた。
「ややこしいことになるからだよ。特に優木寧々に知られたら、後々、面倒なことになる。」
そう言うと、速水くんは面倒くさそうな、しかめた顔をした。
「う~ん。」
(確かに寧々ちゃんと速水くんは仲が良いとはいえない。)
「分かった。寧々ちゃんと佑宇真くんには言わない。」
「そうかぁ。」
そう呟くと、速水くんはいきなり僕を抱きしめてきた。
「ええっ!?速水くん、何!?お願い!離してよ!」
僕は身をよじって、速水くんの逞しい胸の中から逃れようとする。
なぜか男同士だって分かってるのに、ドキドキする。
今、僕が『寧々ちゃん』で女の子だからかな?
普通の男の子の胸って、こんなに逞しいんだ。
ひたり始めた時、ハッと我に返った。
「お願い!速水くん!離して!」
僕は速水くんにもう一度、言った。
「お前、分かってるの?最初、俺、お前に何て言ったか。」
(そうだ。速水くんに『僕のことが好き』って言われたんだ。でも、僕は……。)
「速水くん、ごめんなさい。僕、他に好きな人がいる。っていうか、僕、『男』だし……。」
「俺とは考えられない?」
「うん。ごめんなさい。」
僕がそう言って断ると、速水くんは不敵に笑って、
「まあ、お前に断られるのなんて、想定内なんだよな。」
と、そう言った。
「へぇっ!?」
僕はすっとんきょうな声を出してしまった。
「想定内……?」
「そうあらかじめ予想できたってことだよ。」
僕はそう言った速水くんを見て、ますます分からない。
速水くんは『寧々ちゃんじゃなくて、僕を好きって言った。』
にもかかわらず、『寧々ちゃん』の姿の僕に告白をして、抱きしめた。
しかも、断られるのも分かってて……。
「お前さ、前に『俺の頼み事』を聞いてくれるって言ったじゃん?」
「頼み事?」
「そう。まさか忘れたとは言わせないよな?」
(速水くんの頼み事……。あっ、あの時の……。)
そう。僕が速水くんに柊木つかさちゃんが好きだとバレちゃった時の話だ。
『俺の頼み事、聞いてくれる?』
速水くんは不敵にニヤリと笑ってそう言った。
僕はもう頷くことしかできなくて、コクリッと頷いた。
『じゃあさ、週に1日、俺のマンションに来て、料理とお菓子と作ってくれよ。』
『速水くんのマンションに行って、料理とお菓子だけ作ったらいいの?』
『そう。』
(それだけなら、まあ、いいか……。)
『うん。いいよ。』
確かにあの時は頷いて、納得した。
でも、今、僕は『寧々ちゃん』なわけで……。
「速水くん、それは僕たちが『元に戻った』時まで……」
「やだな。」
「ええっ!?」
「だいたい、お前ら、いつ『元に戻る』んだよ。俺はそんなに待てない。それよりも、『誰にも言わないでほしい』んだろ?優木魔裟斗、お前に選択の余地はない。」
僕は困りながらも、頷くしかなかった。
それを後に後悔することになろうとは、今の僕には思いもしなかった。
怪我も治り、学校へ行く日がやってきた。
オレも不安だけど、魔裟斗はもっと不安な様子だった。
三人でこれからのことについて、話し合いをした時、佑宇真にはいっぱい励ましてもらった。
だから、本当に自分の身体に戻れるか不安だけど、今、オレは『魔裟斗』にならなくちゃならない。
「寧々ちゃん、やっぱり、僕、自信ないよ……。寧々ちゃんになれない……。」
魔裟斗はあの日から弱音を吐きまくりだ。
(男のくせに本当に……。)
「今さら、ぐちゃぐちゃ言っても始まらないだろう?なっちまったものは。なるようになるんだよ。大丈夫だ。オレだって、佑宇真だって、ついてる!」
魔裟斗はまだ不安そうな顔をしていたが、
「…そうだよね。寧々ちゃんや佑宇真くんがいてくれるんだもんね。大丈夫だよね…。」
と、そう言った。
「おはよう!」
オレは思いっきり元気いっぱいにあいさつした。
もちろん、オレは今、『魔裟斗』の姿だ。
一瞬、クラスメイトたちが驚いた顔をした。
(ヤバい、モロ素の自分だった。しかし、一体、魔裟斗のヤツ、いつもどんなあいさつしてんだ?)
そんなことを考えてた時、
「マサくん、どうしたの?マサくんらしくない、あいさつの仕方。何かあったの?」
魔裟斗と一番に仲の良い、香里奈という女の子だ。
「…おはよう、香里奈…ちゃん。」
「う~ん。マサくん、やっぱり変。本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫、大丈夫!」
「それなら、いいんだけど。何かあったら、私に言ってね。」
「うん。香里奈…ちゃん、ありがとう。」
(ちゃん付けは、やっぱり慣れない。それよりも魔裟斗のヤツ、上手くやってるかな?)
僕は教室のドアの前にいまだに立っていた。中になかなか入れずにいるのだ。
すると、
「おい、優木寧々、お前、そんなとこで何やってるんだ?邪魔だ、どけ。」
速水くんだった。
「は…速水くん!ごめんなさい。」
「速水くん!?優木寧々、お前、どこかに頭打ったんじゃないのか?もしくは、何か変な物でも食べたか?」
「えっ!?」
(しまった~。僕は今、寧々ちゃんなんだ。寧々ちゃんなら、こういう時、どんな対応するんだろう?分からない……。とりあえず、え~い。)
「…は…速水、…お…オレがどこにいようと勝手だろ?」
思いっきり、どもってしまった。
速水くんは一瞬、変な顔をしたように見えた。
だが、
「まあ、お前がどこにいようと勝手だけど、俺の邪魔だけはするなよ。」
それだけ言い捨てると、またどこかへ行ってしまった。
(速水くん、授業、受けない気なのかな?)
だが、もうすぐ朝のホームルームが始まってしまう。
(僕も教室に入らないとなんだけど。)
なかなか勇気が出ない。
「あ~、ギリギリセーフ!あれ!?寧々じゃん。久しぶり。こんなとこで何してるの?」
寧々ちゃんの友達の紗耶香ちゃんっていう子だった。
確か、寧々ちゃんは『サヤちん』 って呼んでたような気がする。
「…サヤちん、おはよう。」
「寧々、早く教室に入りなよ。私も入ろうっと。」
「うん。」
僕は無事に紗耶香ちゃんのおかげで教室に入ることができたのだった。
オレと魔裟斗もお互いの生活に慣れ始めてきた。
変わったことといえば、速水が『魔裟斗』に一切、近寄ってこなくなったこと。
まあ、オレは近寄ってこられたら困るけどね。
だが、そんな時に重大な出来事は起こるのだった。
僕はなぜか速水くんに呼び出されていた。
(速水くん、一体、何の呼び出しだろう?何かドキドキする。とんでもない事を言い出すんじゃ……。)
目の前に立っている速水くんの顔をなぜか見られずに下を向いて、何を言い出すか、僕は待っていた。
「あのさ、俺、お前のことが好きなんだ。」
突然、速水くんがそんなことを言い出したので、ビックリして、僕は彼の顔を凝視した。
(ええっ!?速水くんって、寧々ちゃんのことが好きだったの?でも、でも、寧々ちゃんは佑宇真くんのことがずっと好きで……。速水くんだって知ってたのに……。)
「あっ、先に断っておくけどさ、俺が好きなのは優木寧々じゃないから。」
「へっ!?それって、どういう……?」
僕はワケが分からず、必死で頭で考えた。
でも、分からない。
「分からないのか?鈍感な奴。」
「鈍感って……。速水くん、意味分かんないよ。」
速水くんは恥ずかしげもなく、ハッキリと言った。
「俺は優木魔裟斗が好きだって言ってんの。」
それを聞いた瞬間、驚いたのと同時に、頭が真っ白になった。
「…は…速水くん、いつから僕が寧々ちゃんじゃないって、気づいてたの?」
「まあ、怪我して、初めて登校した時に会っただろ?その時からかな。」
(ええっ!?そういえば、一瞬、変な顔してたように見えたのは錯覚じゃなくて?でも……。)
「あのね、速水くん、今は『寧々ちゃん』だけど、僕、『男』だよ?」
「そんなの初めから分かってるんだよ。」
「でも……。」
「しょうがねぇだろ?たまたま好きになった奴が男だったんだから…。」
淡々とそう話すから、僕はもう唖然とするしかない。
でも、速水くんに『僕たちの秘密』がバレちゃったってことは……。
「速水くん、お願い!この事は誰にも言わないで!」
すると、速水くんは
「そんなの言わなきゃ、分かんないだろ?」
「速水くん!!」
「分かってるよ。誰にも言わねーよ。」
速水くんはそう言ってくれた。
「それよりも、俺にバレた事、優木寧々や冴樹には言うなよ。どうせ冴樹の奴は知ってるんだろ?」
「うん。佑宇真くんは知ってるけど、でも、どうして二人に言っちゃいけないの?」
と、僕は素朴な疑問を速水くんにぶつけてみた。
「ややこしいことになるからだよ。特に優木寧々に知られたら、後々、面倒なことになる。」
そう言うと、速水くんは面倒くさそうな、しかめた顔をした。
「う~ん。」
(確かに寧々ちゃんと速水くんは仲が良いとはいえない。)
「分かった。寧々ちゃんと佑宇真くんには言わない。」
「そうかぁ。」
そう呟くと、速水くんはいきなり僕を抱きしめてきた。
「ええっ!?速水くん、何!?お願い!離してよ!」
僕は身をよじって、速水くんの逞しい胸の中から逃れようとする。
なぜか男同士だって分かってるのに、ドキドキする。
今、僕が『寧々ちゃん』で女の子だからかな?
普通の男の子の胸って、こんなに逞しいんだ。
ひたり始めた時、ハッと我に返った。
「お願い!速水くん!離して!」
僕は速水くんにもう一度、言った。
「お前、分かってるの?最初、俺、お前に何て言ったか。」
(そうだ。速水くんに『僕のことが好き』って言われたんだ。でも、僕は……。)
「速水くん、ごめんなさい。僕、他に好きな人がいる。っていうか、僕、『男』だし……。」
「俺とは考えられない?」
「うん。ごめんなさい。」
僕がそう言って断ると、速水くんは不敵に笑って、
「まあ、お前に断られるのなんて、想定内なんだよな。」
と、そう言った。
「へぇっ!?」
僕はすっとんきょうな声を出してしまった。
「想定内……?」
「そうあらかじめ予想できたってことだよ。」
僕はそう言った速水くんを見て、ますます分からない。
速水くんは『寧々ちゃんじゃなくて、僕を好きって言った。』
にもかかわらず、『寧々ちゃん』の姿の僕に告白をして、抱きしめた。
しかも、断られるのも分かってて……。
「お前さ、前に『俺の頼み事』を聞いてくれるって言ったじゃん?」
「頼み事?」
「そう。まさか忘れたとは言わせないよな?」
(速水くんの頼み事……。あっ、あの時の……。)
そう。僕が速水くんに柊木つかさちゃんが好きだとバレちゃった時の話だ。
『俺の頼み事、聞いてくれる?』
速水くんは不敵にニヤリと笑ってそう言った。
僕はもう頷くことしかできなくて、コクリッと頷いた。
『じゃあさ、週に1日、俺のマンションに来て、料理とお菓子と作ってくれよ。』
『速水くんのマンションに行って、料理とお菓子だけ作ったらいいの?』
『そう。』
(それだけなら、まあ、いいか……。)
『うん。いいよ。』
確かにあの時は頷いて、納得した。
でも、今、僕は『寧々ちゃん』なわけで……。
「速水くん、それは僕たちが『元に戻った』時まで……」
「やだな。」
「ええっ!?」
「だいたい、お前ら、いつ『元に戻る』んだよ。俺はそんなに待てない。それよりも、『誰にも言わないでほしい』んだろ?優木魔裟斗、お前に選択の余地はない。」
僕は困りながらも、頷くしかなかった。
それを後に後悔することになろうとは、今の僕には思いもしなかった。