秘め恋*story7~試着室で…~
ふと頭を上げると、店へとつながるドアの前で中村さんと山下さんが私の方を見て笑っているのが見えた。
気のせい?
私の方を見て、笑ってるのかな?
ただ、立ち話をして笑ってるだけ?
そんな風に疑いながら、私は届いてしまった商品を眺めていた。
その後、とりあえず通常業務に戻って閉店まで働いた。
そして、問題の商品の山を見つめて、大きなため息をついた。
すると、その時だった。
「高田さん?」
「た、滝本さん。」
最近、会えると自然と嬉しくなる自分がいて…
そんな彼の姿を見て、気が緩んでしまった。
「た、滝本さんっ……」
「高田さん…?」
そんなつもりじゃなかったのに、ポロポロと涙が溢れていく。
突然泣き出した私に、滝本さんは驚きながら近寄って来た。
「ど、どうしたんですか?」
「あの、あの…私っ…。。」
「一旦、落ち着きましょう?」
まさか自分でもこんなに涙が止まらないなんて思わなかった。
滝本さんは私の肩を軽く支えて、店内にある自販機の近くのベンチに座られてくれた。
冷たい紅茶の缶を渡してくれた時には、私の涙も止まっていた。
滝本さんも私の隣に座る。
「何かあったんですか?」
珍しく目を見つめてそう問われると、私はゆっくりだけど、今日のことを話した。
「そんなことがあったんですか…」
「やっぱり、私にはあんな大きな役、荷が重すぎたんです…」
「そんなことないですよ…だって、何度も確認したんでしょう?」
私が頷くと、滝本さんは“じゃあ、これからどうするか考えないといけませんね”とすこし笑って言った。
そうだ。
起こってしまったことはもうどうすることも出来ないんだ。
後どうするか考えないと。
私はもらった紅茶をゴクッと飲み干すと、ベンチから立ち上がった。
「ありがとうございます、滝本さん。
私、頑張ってみます。」
そう言って、頑張って笑ってみた。
すると、突然ベンチから立ち上がった滝本さんに手を取られて…
「え、あの…」
そのまま、近くにあった試着室へと入った。