秘め恋*story7~試着室で…~
「高田さーん。」
閉店時間を過ぎ、帰る準備をしていた私を売り場チーフの松永さんが呼び止めた。
嫌な予感がする。
私、こういう勘は当たる。
小走りで松永チーフの元へ行くと、
「何でしょうか?」
「帰るところ悪いんだけど、少し残業してもらえないかなぁ。」
「え、」
「高田さんにしかお願いできないのよー。」
「はい。分かりました。」
普段から頼まれると断れない性格の上に、松永チーフはこんな地味な私を何かと買ってくれているため、残業を引き受けてしまった。
本当はこのあと、遅い時間の映画を観ようと思っていたんだけどなぁ。
まぁ、いっか。
「悪いわね。」
「いえ、特に用事もなかったので。」
仕方ないさ。
私には仕事くらいしかないんだから。